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SDSとは?記載する16項目・交付義務・作成方法をわかりやすく解説

公開日

「取引先からSDSの提出を求められたが、どう作ればいいのか分からない」「昔作ったMSDSがそのままになっている」——化学品を扱う事業者様から、こうしたご相談をいただく機会が増えています。2026年4月には労働安全衛生法の義務対象物質が約2,300へと大幅に拡大され、さらに近年の法改正でSDSは「一度作れば終わり」の書類ではなくなりました。定期的な確認・更新までが義務となり、実務の負担は年々増しています。

この記事では、SDS作成支援・GHSラベル発行システムを手がけて40年近くの日本エレクトロニクス工業(JEI)が、「SDSとは何か」を基本から整理し、交付義務の対象、記載する16項目、そして現場で今まさに起きている変化と作成の実務ポイントまでをわかりやすく解説します。

SDSとは?化学品の危険性・有害性を伝える「取扱説明書」

SDS(Safety Data Sheet:安全データシート)とは、化学品の危険性・有害性、取扱い上の注意、応急措置、適用法令などの情報をまとめた文書です。化学品を譲渡・提供する際に、相手方に交付します。

家電製品に取扱説明書が付いてくるように、化学品にはSDSが付いてくる——そうイメージしていただくと分かりやすいと思います。ただしSDSが伝えるのは使い方だけではありません。「この製品にはどんな危険があるのか」「漏れたとき・火災のとき・体に付いたときにどうするか」「どの法律の規制を受けるのか」といった、化学品を安全に取り扱うために必要な情報のすべてが、世界共通の様式で整理されています。

受け取った事業者は、SDSをもとに作業手順の整備、保護具の選定、リスクアセスメント、そして容器へのGHSラベル表示を行います。つまりSDSは、化学品の安全管理すべての「出発点」となる文書です。

MSDSとの違い

「MSDSなら知っている」という方も多いかもしれません。かつて日本ではMSDS(Material Safety Data Sheet:化学物質等安全データシート)と呼ばれていましたが、GHSに基づく国際的な整合の観点から、2012年頃にSDSへと名称が統一されました。内容は基本的に同じものですが、「MSDS時代に作成したまま更新されていない文書」は、後述する現在の記載ルールを満たしていない可能性が高い点に注意が必要です。

日本ではJIS Z 7253に基づいて作成

日本国内では、GHSの内容をJIS規格に落とし込んだJIS Z 7253(危険有害性情報の伝達方法—ラベル、作業場内の表示及び安全データシート)に従ってSDSを作成するのが標準的な方法です。危険有害性の分類基準はJIS Z 7252に定められています。法令(安衛法・化管法・毒劇法)が求めるSDSも、実務上はこのJISに沿って作成すれば要求事項を満たせる仕組みになっています。

「SDSの交付は義務なのか?」——結論から言うと、対象物質を含む化学品を譲渡・提供する場合、SDSの交付は法律上の義務です。日本でSDSに関係する主な法律は次の3つです。

法律SDS交付ラベル表示主な対象

法律

労働安全衛生法(安衛法)

SDS交付

義務

ラベル表示

義務

主な対象

表示・通知対象物質(約2,300物質 ※2026年4月〜)

法律

化管法(PRTR法)

SDS交付

義務

ラベル表示

努力義務

主な対象

第一種・第二種指定化学物質

法律

毒物及び劇物取締法

SDS交付

義務(情報提供)

ラベル表示

義務(「医薬用外毒物・劇物」表示)

主な対象

毒物・劇物

労働安全衛生法:交付義務と規制強化の流れ

実務上もっとも重要なのが労働安全衛生法(安衛法)です。安衛法第57条の2により、通知対象物質を含む化学品を譲渡・提供する際は、SDSにより名称・成分・危険有害性・取扱い上の注意などを相手方に通知することが義務付けられています。

さらに近年は「化学物質の自律的管理」への転換を背景に、SDSを起点とした規制強化が進んでいます。2025年5月14日には「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」(令和7年法律第33号)が公布され、SDSの交付義務違反に対する罰則(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)が新設されました(罰則規定の施行日は、公布の日から起算して5年を超えない範囲内において政令で定める日とされています)。SDSは「出さなくても実害がない書類」ではなく、法令遵守の根幹に関わる文書になりつつあります。

化管法・毒劇法との関係

化管法では指定化学物質についてSDSの提供が義務付けられています。また毒物・劇物に該当する場合は、毒劇法に基づく情報提供が必要です。安衛法・化管法・毒劇法の対象物質は重なっていることも多く、1つの製品が複数の法律のSDS義務を同時に受けるケースは珍しくありません。SDSの「15. 適用法令」の項目で、該当する法規制を漏れなく記載することが求められます。

【2026年4月施行】対象物質は約2,300に大幅拡大

ここ数年、安衛法の対象物質は段階的に拡大されてきました。

時期対象物質数の推移
〜2024年3月(従来)667物質(2023年時点。長年600物質台で推移)
2024年4月234物質を追加 → 896物質に
2025年4月約700物質を追加 → 約1,600物質に
2026年4月約850物質を追加 → 約2,300物質に拡大

なお、「約2,900物質」という数字を目にすることがありますが、これは国がGHS分類で危険性・有害性を確認した物質を順次追加していくという方針段階で示された規模感です。実際に施行された2026年4月時点の表示・通知対象物質は約2,300物質であり、両者は区別して理解しておく必要があります。最新の対象物質は厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の公式一覧で確認できます。

この拡大により、GHS分類で危険性・有害性があると区分される化学品のほぼすべてが規制対象になりつつあります。「昔調べたときは対象外だった」という製品が、いま改めて確認すると対象になっている——このパターンが現場ではもっとも危険です。自社製品に含まれる物質が対象かどうかは、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の対象物質検索で確認できます。

SDSは「作って終わり」ではない——現場で起きている4つの変化

ここまでが「教科書的な」SDSの基本です。しかし実際の現場では、法改正と商習慣の変化によってSDSに求められる水準そのものが引き上げられています。長年、化学品メーカー様の現場を見てきた立場から、いま特に対応のご相談が増えている4つの変化をご紹介します。

変化① 5年以内ごとの定期確認・更新が義務に

2023年4月施行の改正により、SDSの通知事項である「人体に及ぼす作用」について、5年以内ごとに1回、記載内容に変更がないか確認し、変更があるときは確認後1年以内に更新して再通知することが義務付けられました。

これはSDS実務の考え方を根本から変える改正です。従来は「作成して交付すれば完了」でしたが、現在は自社が交付してきたすべてのSDSについて、確認期限を管理し続ける必要があります。品目数が数十・数百とある事業者様では、「どのSDSをいつ確認したか」の台帳管理なしには対応できません。

さらに、2025年5月公布の改正安衛法では、通知事項に変更が生じた場合に相手方へ通知することが、努力義務から義務へと引き上げられました。定期確認とあわせて、交付後も記載内容を最新に保ち、変更を相手方に伝えることが、SDS実務の前提になっています。

現場で増えているご相談

「MSDS時代から使い回してきたSDSが数百件あり、どれが最新の様式・分類に対応しているのか把握できていない」——このようなご相談が増えています。定期確認義務への対応は、1件ずつ手作業で見直すのではなく、SDS作成支援ソフトで品目データベースごと管理し、分類基準や法令の改正時に一括で影響範囲を洗い出せる体制を作ることが近道です。

変化② 記載ルールの厳格化——重量%表記と「想定される用途」

2024年4月からは、SDSの記載ルール自体も厳格化されています。主な変更点は次の2つです。

変更点内容

変更点

成分含有量の重量%表記

内容

従来認められていた10%刻みの幅表記を改め、重量%での記載が必要に(営業秘密に関わる場合の例外規定あり)

変更点

「想定される用途及び使用上の注意」の追加

内容

通知事項に新設。譲渡提供時に想定される用途と、その用途における使用上の注意を記載

古い様式のまま運用しているSDSは、こうした現行ルールを満たしていない可能性があります。「取引先の監査でSDSの不備を指摘された」というきっかけでご相談いただくケースも少なくありません。

変化③ 義務のない化学品でも「全品SDS」——商習慣の変化

法改正と並んで見逃せないのが、法的にはSDS交付義務のない化学品にも、自主的にSDSを提供する企業の増加という商習慣の変化です。

GHSの大原則は「化学品の危険性・有害性を見える化し、取り扱うすべての人に伝える」ことです。この観点から、危険有害性が確認されていない化学品であっても、「危険有害性情報:分類基準に該当しない」といった内容のSDSをあえて作成・提供し、「確認した結果、危険性はない」ことまで含めて見える化する運用が、コンプライアンス意識の高い企業を中心に広がっています。

取引先から「義務対象かどうかにかかわらず、全品SDSを提出してほしい」と要請されるケースも増えており、サプライチェーン全体で「SDSのない化学品は受け入れない」方向に商習慣が変わりつつあります。義務の範囲だけ対応すればよい時代から、取引の前提としてSDSが求められる時代への移行が進んでいると言えます。

なお、この「全品対応」の動きは現時点ではSDSが先行しており、GHSラベルはまだそこまで至っていないというのが私たちの現場観測です。ただしSDSで全品対応が取引の前提になれば、同じ情報を容器の表示にも求める動きが出てくるのは自然な流れであり、ラベルにも数年遅れで波及していく可能性があります。

変化④ 試作品・サンプル品から輸出対応まで、必要な場面が拡大

SDSが必要になる「場面」も広がっています。少量の試験研究用の物やサンプルとして提供する物も、安衛法上の「譲渡・提供」に該当するため、対象物質を含む場合はSDS交付とラベル表示の対象です(詳しくはGHSラベルとは?の記事で解説しています)。

また輸出製品については、仕向国の言語・様式・採用GHS版に従ったSDSの作成が求められます。英語版を1つ作れば済むわけではなく、国ごとに分類結果や記載要求が異なるため、輸出先が増えるほどSDSの管理は複雑になります。国内向け・海外向け・試作品・そして義務対象外の「全品対応」——SDSが必要な場面は、かつてとは比較にならないほど広がっています。

SDSに記載する16項目

JIS Z 7253に基づくSDSは、次の16項目で構成されます。この項目立ては世界共通です。

項目記載内容

項目

1. 化学品及び会社情報

記載内容

化学品の名称、供給者の名称・住所・電話番号、緊急連絡先など

項目

2. 危険有害性の要約

記載内容

GHS分類の結果、絵表示、注意喚起語、危険有害性情報、注意書き

項目

3. 組成及び成分情報

記載内容

成分名、CAS番号、含有量(重量%)など

項目

4. 応急措置

記載内容

吸入・皮膚付着・眼への混入・飲み込んだ場合の措置

項目

5. 火災時の措置

記載内容

適切な消火剤、消火時の保護具など

項目

6. 漏出時の措置

記載内容

人体への注意事項、環境への配慮、封じ込め・浄化の方法

項目

7. 取扱い及び保管上の注意

記載内容

安全な取扱い・保管の条件

項目

8. ばく露防止及び保護措置

記載内容

管理濃度・許容濃度、設備対策、保護具

項目

9. 物理的及び化学的性質

記載内容

外観、臭い、pH、引火点、沸点など

項目

10. 安定性及び反応性

記載内容

危険有害反応の可能性、避けるべき条件・接触物質

項目

11. 有害性情報

記載内容

急性毒性、発がん性、生殖毒性などの詳細情報

項目

12. 環境影響情報

記載内容

水生環境有害性、残留性、生体蓄積性など

項目

13. 廃棄上の注意

記載内容

残余廃棄物・汚染容器の安全な処理方法

項目

14. 輸送上の注意

記載内容

国連番号、国連分類、海洋汚染物質の該当性など

項目

15. 適用法令

記載内容

安衛法・化管法・毒劇法・消防法など該当する法規制

項目

16. その他の情報

記載内容

参考文献、改訂履歴など

16項目と聞くと膨大に感じられるかもしれませんが、核になるのは「2. 危険有害性の要約」=GHS分類の結果です。分類さえ正しくできれば、絵表示・注意喚起語・注意書きなどの多くの記載事項は分類結果から機械的に導き出されます。逆に言えば、分類を誤ると2項だけでなくSDS全体、さらにはラベルまで間違いが波及します。

SDSとGHSラベルの関係

SDSとGHSラベルは、いわば「親子関係」にあります。どちらも情報の源泉は「GHS分類の結果」であり、SDSの2項の内容がラベルに反映されます。

比較項目SDSGHSラベル

比較項目

役割

SDS

詳細情報を事業者に伝える(16項目の文書)

GHSラベル

要点を現場の作業者に伝える(容器の表示)

比較項目

情報量

SDS

多い(数ページ〜)

GHSラベル

絞られている(6項目)

比較項目

情報の源泉

SDS

GHS分類の結果

GHSラベル

SDSの2項の内容がメイン

SDSの「2. 危険有害性の要約」に記載した絵表示・注意喚起語・危険有害性情報・注意書きが、そのままGHSラベルの記載内容になります。つまり正しいSDSが先にあれば、ラベルは自動的に作れる——この関係を仕組み化したものが、SDS作成支援ソフトとラベル発行ソフトの連携です。SDSとラベルを別々の担当者・別々のツールで管理していると、SDS改訂時にラベルへの反映が漏れる事故が起きがちです。

SDS作成の実務ポイント

作成の流れは「組成把握 → GHS分類 → 16項目への落とし込み」

  1. 組成を把握する
    製品に含まれる成分と含有量(重量%)を正確に整理します。仕入原料については供給元のSDSを入手します。
  2. GHS分類を行う
    JIS Z 7252の基準に従い、物理化学的危険性・健康有害性・環境有害性を分類します。
  3. 16項目に落とし込む
    分類結果と各種データベースの情報をもとに、16項目を記載します。
  4. ラベルに展開する
    SDS2項の内容をもとにGHSラベルを作成します。

最大の難関は「混合物の分類」

単一物質であれば、国のGHS分類結果など公開情報を参照できます。しかし実際の製品の多くは混合物であり、成分ごとの情報から濃度限界(カットオフ値)の判定や加算式の計算を行って、混合物全体としての分類を導く必要があります。ここがSDS作成の最大の難関であり、手計算では品目数が増えた途端に破綻しがちな領域です。

SDS作成支援ソフトを使えば、成分と含有量を入力するだけで混合物の分類計算を自動化でき、分類結果から16項目への展開、改訂履歴の管理までを一元化できます。前述の定期確認義務・重量%表記・全品SDS・多言語対応まで含めて考えると、品目数が20を超えたあたりからは、手作業よりも仕組み化のほうが確実に安くつくというのが、多くの現場を見てきた実感です。

よくある質問

SDSとMSDSの違いは何ですか?

内容は基本的に同じもので、名称が変わりました。GHSに基づく国際整合の観点から、2012年頃にMSDSからSDSへ名称が統一されました。ただしMSDS時代に作成したまま更新されていない文書は、現行の記載ルール(重量%表記、想定用途の記載など)を満たしていない可能性があります。

SDSに有効期限はありますか?

有効期限そのものはありませんが、2023年4月施行の改正により、「人体に及ぼす作用」を5年以内ごとに1回確認し、変更があるときは確認後1年以内に更新することが義務付けられました。また、2025年公布の改正安衛法により、通知事項に変更が生じた場合の相手方への通知も努力義務から義務へ引き上げられています。「作りっぱなし」は認められなくなっています。

義務対象外の化学品にもSDSは必要ですか?

法律上の交付義務はありません。ただし近年は、取引先から「全品SDSを提出してほしい」と要請されるケースが増えており、危険有害性が確認されていない化学品でも「分類基準に該当しない」と記載したSDSを提供する運用が広がっています。実務上は、取引の前提として全品SDSに対応できる体制づくりをお勧めします。

SDSは紙で交付しなければなりませんか?

紙に限定されません。法改正により通知方法が柔軟化され、電子メールの送付や、閲覧用URL・QRコードを伝えてウェブ上で閲覧してもらう方法なども認められています。ただし相手方が確実に内容を確認できることが前提です。

混合物のSDSはどのように作成しますか?

含有する成分ごとの危険有害性情報をもとに、濃度限界の判定や加算式の計算を行い、混合物全体としてGHS分類したうえで16項目に落とし込みます。専門的な計算が多いため、SDS作成支援ソフトで分類を自動化するのが実務的です。

輸出製品には英語版・多言語のSDSが必要ですか?

必要になるケースがほとんどです。SDSは仕向国の言語・様式・採用GHS版に従って作成するのが原則で、英語版だけでは不十分な国もあります。輸出先が複数ある場合は多言語SDS作成に対応したソフトの活用が現実的です。

まとめ

SDSとは、化学品の危険性・有害性と安全な取扱い方法を伝える世界共通様式の文書であり、日本では安衛法・化管法・毒劇法により交付が義務付けられています。2026年4月には対象物質が約2,300に拡大し、さらに5年ごとの定期確認義務、重量%表記、交付義務違反への罰則新設、そして義務対象外まで含めた「全品SDS」の商習慣化と、SDSに求められる水準は年々高くなっています

一方で、SDSの核心は「正しいGHS分類」にあり、分類さえ正確にできれば16項目への展開もGHSラベルへの反映も仕組みで解決できます。増え続ける品目と改正対応を手作業で追いかけるのではなく、SDSとラベルを一元管理する体制を整えることが、これからの化学品管理の基本になります。まずは自社のSDSが現行ルール(重量%表記・定期確認)に対応できているかの棚卸しから始めてみてください。

SDS作成からGHSラベル発行までワンストップで支援します

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