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GHSラベルとは?表示義務の対象・記載6項目・絵表示をわかりやすく解説

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「取引先からGHSラベルを貼ってほしいと言われたが、何から手を付ければいいのか分からない」——化学品を扱う現場から、こうしたご相談をいただく機会が増えています。特に2026年4月からは、労働安全衛生法によるラベル表示・SDS交付の義務対象が約2,300物質へと大幅に拡大されました。さらに近年は、試作品・サンプル品への対応、輸出先ごとの規制対応など、GHSラベルを取り巻く実務は年々複雑さを増しています

この記事では、GHSラベル発行システムを40年近く開発してきた日本エレクトロニクス工業(JEI)が、「GHSラベルとは何か」を基本から整理し、表示義務の対象、記載すべき項目、絵表示の意味、そして現場で今まさに起きている変化と実務ポイントまでをわかりやすく解説します。

GHSラベルとは?世界共通の化学品表示ルール

GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals:化学品の分類および表示に関する世界調和システム)とは、化学品の危険性・有害性の分類基準と、その伝達方法(ラベル・SDS)を世界共通のルールとして定めたものです。2003年に国連で採択され、現在は世界各国で導入されています。

それ以前は、同じ化学品でも国によって「危険物」の分類基準やラベルの様式がバラバラでした。輸出のたびに相手国のルールに合わせてラベルを作り直す必要があり、事故防止の観点でも問題がありました。GHSはこの状況を解消するために生まれた、いわば「化学品の危険性を伝えるための世界共通言語」です。

そしてGHSラベルとは、このGHSのルールに従って作成し、化学品の容器や包装に貼付するラベルのことを指します。赤いひし形の枠に黒いシンボルが描かれた「絵表示(ピクトグラム)」を、一度は目にされたことがあるのではないでしょうか。

日本ではJIS Z 7253に基づいて運用

日本国内では、GHSの内容をJIS規格に落とし込んだJIS Z 7253(危険有害性情報の伝達方法—ラベル、作業場内の表示及び安全データシート)に従ってラベルとSDSを作成するのが標準的な方法です。分類の基準はJIS Z 7252に定められています。後述する労働安全衛生法などの法令も、実務上はこのJISに沿って対応すれば要求事項を満たせる仕組みになっています。

GHSラベルの表示は義務?根拠となる3つの法律

「GHSラベルは義務なのか?」——結論から言うと、対象物質を含む化学品を譲渡・提供する場合、ラベル表示は法律上の義務です。日本でGHSラベルに関係する主な法律は次の3つです。

法律ラベル表示SDS交付主な対象

法律

労働安全衛生法(安衛法)

ラベル表示

義務

SDS交付

義務

主な対象

表示・通知対象物質(約2,300物質 ※2026年4月〜)

法律

化管法(PRTR法)

ラベル表示

努力義務

SDS交付

義務

主な対象

第一種・第二種指定化学物質

法律

毒物及び劇物取締法

ラベル表示

義務(「医薬用外毒物・劇物」表示)

SDS交付

義務

主な対象

毒物・劇物

労働安全衛生法:ラベル表示の「義務」

実務上もっとも重要なのが労働安全衛生法(安衛法)です。安衛法第57条により、表示対象物質を含む化学品を容器に入れ、又は梱包して譲渡・提供する際は、名称・注意喚起語・危険有害性情報・絵表示などをラベルで表示することが義務付けられています。違反した場合は罰則の対象となることがあります。

化管法・毒劇法との関係

化管法ではSDSの提供が義務、ラベル表示は努力義務とされています。また毒物・劇物に該当する場合は、毒劇法に基づく「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」の表示が別途必要です。つまり自社の製品がどの法律の対象になるかによって、ラベルに求められる内容が変わってきます。複数の法律に同時に該当するケースも珍しくありません。

【2026年4月施行】対象物質は約2,300に大幅拡大

ここ数年、安衛法の対象物質は段階的に拡大されてきました。

時期対象物質数の推移
〜2024年3月(従来)667物質(2023年時点。長年600物質台で推移)
2024年4月234物質を追加 → 896物質に
2025年4月約700物質を追加 → 約1,600物質に
2026年4月約850物質を追加 → 約2,300物質に拡大

「約2,900物質」という数字との違いに注意

「約2,900物質」という数字を目にすることがありますが、これは国がGHS分類で危険性・有害性を確認した物質を順次追加していくという方針段階で示された規模感です。実際に施行された2026年4月時点の表示・通知対象物質は約2,300物質であり、両者は区別して理解しておく必要があります。最新の対象物質は厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の公式一覧で確認できます。

この拡大により、GHS分類で危険性・有害性があると区分される化学品のほぼすべてが規制対象になりつつあります。「うちの製品は対象外だから関係ない」と思っていた事業者様が、実は新たに対象になっていた——というケースが今まさに増えています。自社製品に含まれる物質が対象かどうかは、厚生労働省「職場のあんぜんサイト」の対象物質検索で確認できます。

GHSラベル対応は年々「複雑化」している——現場で起きている3つの変化

ここまでが「教科書的な」GHSラベルの基本です。しかし実際の現場では、法改正と商習慣の変化によって、対応すべき範囲が基本の枠を超えて広がり続けています。長年、化学品メーカー様の現場を見てきた立場から、いま特に対応のご相談が増えている3つの変化をご紹介します。

変化① 試作品・サンプル品にもラベル表示が必要に

従来、GHSラベルは「BtoBで販売する製品」に貼るもの、という認識が現場の主流でした。しかし、少量の試験研究用の物やサンプルとして提供する物も、安衛法上の「譲渡・提供」に該当し、ラベル表示・SDS交付の対象になることが厚生労働省のQ&Aでも明確に示されています。

特に対象物質が約2,300に拡大された現在では、「試作品だから」「無償サンプルだから」という理由でラベルを省略することはできません。営業担当者が展示会や商談で手渡すサンプル品、開発部門が取引先に送る試作品——これらすべてにラベル対応が求められる時代になっています。

現場で増えているご相談

「製品のラベルは発行体制ができているが、試作品・サンプル品は品目が多く、組成も頻繁に変わるため、ラベル作成が追いつかない」——このようなご相談が増えています。試作品は少量多品種になりがちで、1品ごとに手作業でラベルを作っていては現場が回りません。SDSの分類結果からラベルを即時発行できる仕組みづくりが、対応のカギになります。

変化② 「義務の範囲だけ対応」では済まない流れ——SDSで先行する全品対応

もうひとつ注目したいのが、「義務対象の化学品だけ対応すればよい」という前提そのものが崩れ始めていることです。

GHSの大原則は「化学品の危険性・有害性を見える化し、取り扱うすべての人に伝える」ことです。この観点から、法的に義務のない化学品についても、「確認した結果、危険性はない」ことまで含めて情報提供する運用が、コンプライアンス意識の高い企業を中心に広がりつつあります。

ただし、この動きが先行しているのは、ラベルではなくSDSです。取引先から「義務対象かどうかにかかわらず全品SDSを提出してほしい」と要請されるケースが増えており、サプライチェーンの中で「SDSのない化学品は受け入れない」という商習慣が定着しつつあります(詳しくはSDSとは?(記載16項目・交付義務)の解説記事をご覧ください)。

ラベルについては、現時点でここまでの全品対応が一般化しているわけではありません。ただし、SDSで「全品対応」が取引の前提になれば、同じ情報を容器の表示でも求める動きが出てくるのは自然な流れです。SDSで起きている変化は、数年遅れでラベルにも波及してくる——長年この業界を見てきた経験から、私たちはそう見ています。いま義務対応の仕組みを整えておくことが、将来の商習慣の変化への備えにもなります。

変化③ 輸出先の国ごとに異なる対応が必要に

ここまで日本国内の制度を中心に解説してきましたが、輸出製品についてはさらに複雑です。GHSは「世界共通ルール」であるものの、各国が採用しているGHSの版や、国内法への落とし込み方はそれぞれ異なります。そのため輸出製品には、輸出対象国の法律・規制に従ったGHSラベル対応が必要であり、この要求は年々厳格化しています。代表的なポイントは次のとおりです。

言語仕向国の公用語での記載が原則(英語併記だけでは不十分な国も)
分類の差異同じ製品でも国によって分類結果・必要な絵表示が変わることがある
国独自の要件中国では当局への登記に基づき発行される専用QRコードをラベルに表示する動きがあるなど、GHSの枠を超えた追加要件が登場
海上輸送BS5609規格(海水浸漬後も判読可能)への適合が求められる場合がある

特に中国向けは、危険化学品の登記制度と連動したQRコード表示など、「その国の当局システムと連携しなければラベルが完成しない」という新しい段階に入りつつあります。輸出比率の高い事業者様ほど、ラベルの多言語対応・国別対応を仕組みとして整備しておくことが重要になっています。

GHSラベルに記載する6項目

JIS Z 7253に基づくGHSラベルには、次の6項目を記載します。

① 化学品の名称SDSに記載した名称と一致させる
② 絵表示赤枠のひし形+黒シンボルのピクトグラム。分類結果に応じて選択
③ 注意喚起語「危険」または「警告」のいずれか。より重大な危険有害性には「危険」を使用
④ 危険有害性情報「引火性の高い液体及び蒸気」など、分類結果に対応した文言
⑤ 注意書き安全対策・応急措置・保管・廃棄に関する注意事項
⑥ 供給者の特定情報供給者の名称・住所・電話番号

ポイントは、これらの項目を自分で一から考える必要はないということです。②〜⑤はすべて、GHS分類の結果から機械的に決まります。つまり正しいSDS(分類結果)さえあれば、ラベルの中身は自動的に導き出せる——ここが後述するラベル発行ソフトの出番になります。

GHS絵表示(ピクトグラム)9種類の意味

GHSの絵表示は全部で9種類。いずれも「赤い枠・白地・黒いシンボル」で構成されます。

名称主な意味
引火性・可燃性・自然発火性など
円上の炎酸化性(他の物質の燃焼を助ける)
爆弾の爆発爆発物・自己反応性化学品など
ガスボンベ高圧ガス
腐食性金属腐食性、皮膚腐食性・重篤な眼の損傷
どくろ急性毒性(重篤)
感嘆符急性毒性(軽度)、皮膚・眼刺激性など
健康有害性発がん性、呼吸器感作性、特定標的臓器毒性など
環境水生環境有害性

絵表示は必ずカラー(赤い枠)で印刷する必要があります。モノクロ印刷で赤枠が黒くなったラベルは、GHSのルールを満たしません。GHSラベルの運用にカラープリンターが欠かせない理由がここにあります。

GHSラベル作成・印刷の実務ポイント

作成の流れは「SDS → 分類 → ラベル」

GHSラベル作成の基本的な流れは次のとおりです。

  1. SDSを準備する
    自社製品の組成をもとにGHS分類を行い、SDSを作成します。(仕入品の場合は供給元のSDSを入手)
  2. 分類結果を確認する
    SDSの「2. 危険有害性の要約」に、絵表示・注意喚起語・危険有害性情報がまとまっています。
  3. ラベルを作成・印刷する
    分類結果をラベルレイアウトに落とし込み、容器サイズに合わせて印刷します。

手作業でも作成は可能ですが、製品数が増えると「SDSの改訂がラベルに反映されていない」「容器サイズごとのレイアウト調整に時間がかかる」といった管理上の問題が起きがちです。前述のとおり試作品・サンプル品まで対応範囲が広がった現在は、なおさらです。ラベル発行ソフトを使えば、SDSの分類結果からラベルへの反映、多サイズ展開、履歴管理までを一元化できます。

印刷で失敗しないための3つの注意点

  1. 印字の耐久性
    化学品のラベルは、薬品の付着・擦れ・屋外保管などの過酷な条件にさらされます。トナーを熱で定着させるレーザープリンター方式は、印字がにじみにくく、薬品がかかる環境でも判読性を維持しやすい方式です。
  2. 用紙とプリンターの相性
    ラベル用紙には耐水性・耐薬品性・粘着剤の種類など多くの選択肢があります。プリンターとの相性が悪いと、印字かすれや紙詰まりの原因になります(詳しくはラベルプリンターと用紙の適合性を解説した記事もご覧ください)。
  3. 海上輸送はBS5609規格
    輸出品を海上輸送する場合、海水に3ヶ月浸かっても判読できることを求めるBS5609規格への適合が求められることがあります。用紙とプリンターの組み合わせで認証を取得しているかがポイントです。

現場でよくあるご相談

「汎用のオフィスプリンターでGHSラベルを印刷していたところ、溶剤が付着した部分の印字が消えてしまい、取引先から指摘を受けた」——このようなご相談は少なくありません。ラベルは貼った瞬間ではなく、流通・保管の全期間にわたって判読できることが求められます。プリンター・用紙・ソフトを「GHSラベル用途」として一体で選定することが、結果的にいちばんの近道です。

よくある質問

GHSラベルはどのような製品に必要ですか?

労働安全衛生法で定められた表示対象物質を含む化学品を、譲渡・提供する場合にラベル表示が義務付けられます。2026年4月の改正施行により対象は約2,300物質に拡大されており、危険性・有害性があると分類される化学品のほぼすべてが対象になりつつあります。

試作品やサンプル品にもGHSラベルは必要ですか?

必要です。少量の試験研究用の物やサンプルとして提供する物も、安衛法上の「譲渡・提供」に該当するため、対象物質を含む場合はラベル表示とSDS交付の対象になります。「販売前の試作品だから不要」という考え方は通用しない点にご注意ください。

GHSラベルのサイズや色に決まりはありますか?

絵表示は「赤い枠・白地・黒いシンボル」と定められているため、カラー印刷が実質的に必須です。ラベル全体のサイズに明確な法定基準はありませんが、容器に貼付した状態で記載事項がはっきり読み取れる大きさが求められます。

輸出用と国内用でGHSラベルは同じものを使えますか?

そのままでは使えないケースが多くあります。GHSの導入状況・採用版は国ごとに異なり、仕向国の言語での記載や、その国独自の追加要件(中国の登記制度に基づくQRコード表示など)への対応が求められることがあります。海上輸送ではBS5609規格適合ラベルが求められることもあります。

GHSラベルを自社で印刷するには何が必要ですか?

①SDSの情報をもとにラベルデータを作成するラベル発行ソフト、②赤枠の絵表示を印刷できるカラーレーザープリンター、③薬品や擦れに耐えるラベル用紙、の3点が基本です。熱転写方式と異なりレーザー方式は印字が定着するため、薬品がかかる環境でも判読性を維持しやすいのが特長です。

まとめ

GHSラベルとは、化学品の危険性・有害性を世界共通のルールで伝えるためのラベルであり、日本では労働安全衛生法により表示が義務付けられています。2026年4月からは対象物質が約2,300に拡大され、さらに試作品・サンプル品への対応、SDSで先行する「全品対応」の商習慣、輸出先ごとの規制対応と、現場が対応すべき範囲は年々広がっています

一方で、記載する6項目はSDSの分類結果から導き出せるため、「正確なSDS」と「それをラベルに反映できる仕組み」さえ整えば、GHSラベル対応は決して難しいものではありません。複雑化する要求に手作業で立ち向かうのではなく、仕組みで対応する——これがこれからのGHSラベル運用の基本になります。まずは自社製品(試作品・サンプル品を含む)が対象物質を含むかどうかの確認から始めてみてください。

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